夢想家

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最高ランク : 2 , 更新： 2023/12/20 19:42:32

🟣10/21追記しました
お気に入り追加してくださっている方が割といらっしゃったので、もっと書きたいことを思いついたらその都度ちょこちょこ追記していこうと思います

突然ですが、皆様夢野久作という小説家の名前はご存知でしょうか。
最近その方の作品にハマってしまったので、少し足を突っ込んだレベルの知識での話ですが今日はその方についてメモがてら話したいと思います。つまり布教兼推し語りです。暇な方はぜひ読んでいただけると嬉しいです。

代表作は「ドグラ・マグラ」と言えば聞いたことあるかも！という人が増えるのではないでしょうか、日本三大奇書のうちの一作として有名な探偵小説(....?)です。怪奇な文体、複雑な時系列、漂う妖しい雰囲気で、「奇書」の名を冠するにふさわしい作品だと思います。

日本三大奇書についてはかなり前に投稿でお話をした気もするのですが、
・夢野久作「ドグラ・マグラ」
・中井英夫「虚無への供物」
・小栗虫太郎「黒死館殺人事件」
の三つです。

ドグラ・マグラと虚無への供物は読んだ....正確には虚無への供物はちゃんと読みました。現代に通用(といっても60～70年代の作品)するような濃い魅力的なキャラクター、耽美で繊細な文体と好きな作風だったので中井英夫の作品をもっと読んでみたいと思っているところです。

ドグラ・マグラのほうはマジで途中でリタイアしました。グロいからとか描写が..とかそういうわけではなく、どこか淡々と繰り返される、終わりの見えない絶望感と虚無感、途中のド長文イカレゾーンがキツかったからです。😅
黒死館も一度読んでみたいのですが、なかなか買える機会がなく。

まあどんなものかは読んでもらうのが手っ取り早い。(青空文庫で多分全部無料で読めます)
前半40ページ分くらいはギリ読めたのですが、そこから先の記憶が本当にないです。
そもそも夢野久作自体「コンナ処に....」「スバラシイ機智」など独特なカタカナと点の使いをするので、それに慣れない人はかなり違和感があるのでは...と思います。
とりあえず、夢野作品を読んでみたいと思ったらドグラ・マグラ以外のほうがいいのではないかなと思います.... 怪奇作品に慣れている人ならまだしも、文学に触れたいからとドグラ・マグラを選んでしまったらかなり苦戦すると思います。非日常を感じたい方にはおすすめ。

ただ、奇怪な作品だから、読み難いからという理由で夢野久作作品を諦めるのは非常に勿体ない❗❗❗です❗❗❗確実に❗❗❗
とりあえずドグラ・マグラ以外だと少女地獄、瓶詰地獄あたりがおすすめ(近親相...っぽい表現とか間接的にうわ～..って思う表現があるので注意)
とにかく短編集を買ってみるといいよ‼‼‼

この人の作品は5分後に意外な結末シリーズとかああいう短時間に多く刺激が欲しい人にも刺さると思う。

個人的に夢野久作の魅力の本質は短編に表れていると思います。
数ページで終わる短いものから数十ページのそこそこのものまでありますが、夢野久作の作品は主にこんな感じ

「夢と現実の狭間でどちらにいるかわからない浮遊感」
「語り手や主人公が狂っていく様」
「結局真相がわからず読み手に委ねられる結末」
「一見かわいらしいがどこかダークで不穏」
「そうきたか！という意外な終わり方」
「閉鎖的な田舎の因習や気持ち悪さ」
「明治～大正時代のレトロで耽美な雰囲気」
「女性の妖しさや色気に翻弄される」

これらが好きな人はとことんハマるのでは⁉と思います。
夢野久作作品の一番の特徴はやはり夢と現実の狭間でだんだんと思考が飛躍したりしていく文章かな...精神病棟に閉じ込められたとか家族を失っておかしくなった主人公とかどこか無機質、真っ白いコンクリ壁の部屋に反響する痛切な叫びのようなイメージが浮かぶ...

あと夢野作品に出てくる小さい子って、賢くて大人のことをよく見ている子が多い気がする。なので母親の不倫に気づいて(不倫という概念は知らないけど)それを何の気なしに父親にバラしてしまって場が凍り付くとか、そういうギスギス、ドロドロ系が好きな人もハマりそう

あとは女性がかなり魅力的に描かれている❗❗女学生から熟女まで、皆美しさ、強さ、儚さ、妖しさを兼ね備えた女性が多い
だいたい女学生～若い女性は男性に誑かされて自他共に破滅しようとする儚さがあり、熟女は主人公の男性を唆したりして主人公をおかしくさせたあとに自分を殺させようとしたり、はたまた殺そうとしたりと、妖艶でどこか惹かれる繊細さがあって..

少女地獄に出てくる女性たちはみな男性に逆らおうとするも結局は女性は男性に押しつぶされる。それでも復讐をしたりどうにか一矢報いてやろうと男性を破滅に追い込む強さを持っているし、けむりを吐かぬ煙突だったり女抗主だったりは若い男性を翻弄したり、足元掬われそうになるところを逆に足元掬ってみたりする賢さがあるな～と思う。夢野の文体も相まってぽつぽつと上品に喋る様子も魅力的。

誰が犯人で誰がいつどう殺した、だからここでこうで...みたいなことを全く描かれないことも多い。はっきりしてよ～～～～‼‼っていう人は向かないかもしれないけど解釈を自由にできる話が好きな人は絶対読んでほしい‼‼
私が一番好きなのは縊死体っていう話マジで数ページで終わるし夢野久作の作品の恐さと浮遊感が詰まってて良いこれも青空文庫で読めるよ
あと怪夢も好きこれも短い話がいくつか詰まってるんだけどそれぞれゾッとするし曖昧に終わるし最初の話のほんのりスチームパンク感が好き

エログロな表現も所々にあるのでそれが嫌だよ～とかちょっとマイルドに世界観を味わいたい人はいなか、の、じけんが良いかもこれは田舎で起きた話の短編がいっぱい詰まってるどんでん返し感が落語っぽいしテンポよくパッと読みたい人にはこれ

瓶詰地獄とかもそうなんだけど、実はこれ一見狂ってるこいつよりも語り手のほうがヤバいやつなのでは....被害妄想なのでは.....とか考える余地があるとにかく語り手や主人公が信用できない。
意味わからない話でも実は読む順番が違ってて、ここから読んだら話がみるみるつながる....という仕掛けもある❗

個人的に白菊は私が読んだ中で飛び抜けて表現が綺麗。夢野久作作品では珍しく人殺しも怒らなければエロもグロもないので初めての人にかなりおすすめ。
泥棒の主人公が盗みに入った所が西洋風の館で、そこのベットで美しい寝顔を晒して寝ているまるで人形のような少女がいた.....っていう話なんだが、その少女の美しさの描写が嫌味のない美しさを放っている
白菊という言葉から連想される清潔そうな白、ゴシック建築の繊細さ/荘厳さの表現、また凶悪犯だった泥棒の主人公が少女を前に欲望や恐怖を忘れて美術品のような美しさを見出し、思わず息を飲む描写..........
この文章を書くにあたって再読してみたんだけども本当にサラッと読めて夢野作品特有のジメジメ、ドロっとした後味の悪さがない

10/21
「鉄槌」っていう作品を最近読んだんですけど、この作品は仕事はできるのに酒や煙草に溺れ、無気力で女の誘惑にも動じない強さ(弱さ?)を持った青年と、男(青年の叔父)がいながらその青年を落とそうとする悪い女性の妖しさの対比が気持ち悪くも心地よかった
女性は青年目当てじゃなくて青年の家の資産目当てで、自分の男をも毒殺するんだけど、結局自分で自分の首締めるようなことをしてて自業自得で女性も死ぬでもこんな惨状の中にいながらこうなることを望んでいて、傍から冷笑していた自分(青年)が1番悪魔なのか............みたいな、救いがないけどどこかスッキリして、登場する3人全員が全員別のベクトルの悪役じゃん。チャンチャンっていうのがまた良い勧悪懲悪...?
夢野作品は男が女性に魅惑されて云々、って話が多い中で珍しく青年が全然誘惑に動じない(正確にはちょっと心動いてたり動揺してた部分もあった?)し、それ以上に悪い女の素性を暴いてやろうという気概があって新鮮で良かったな結局青年は我関せずという顔を貫いてて人間味があった

【こんな人におすすめ】
🟣比較的久作ワールドがマイルドな作品(夢野作品初めての方)➡️白菊/人の顔/童貞など

🟣逆に久作ワールドにドップリ浸かってみたい方➡️ドグラ・マグラ/瓶詰地獄/死後の恋/一足お先になど

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🟣夢か現実か..を味わいたい方➡ドグラ・マグラ/木魂/怪夢/一足お先になど

🟣表現が美しく惹き込まれる話➡️白菊/童貞/

🟣作中人物が語る文体(より世界観に引き込める)➡支那米の袋/死後の恋/悪魔祈祷書/人間腸詰など

🟣女が魅力的に描かれた話➡少女地獄/けむりを吐かぬ煙突/女抗主/童貞/鉄槌など

🟣かわいいけどちょっとダーク？➡人の顔/きのこ会議/虻のおれいなど

🟣ショートショートをパッと読みたい方➡いなか、の、じけん/怪夢など

🟣エログロ表現を浴びたい方➡死後の恋(こちらはちょっと切ない)/人間腸詰/一足お先になど

🟣ちょっとゾッとする話➡️縊死体/支那米の袋/冗談に殺す/木魂/怪夢/人間腸詰/人間レコード/衝突心理など

🔵【番外編】人間味のある文章、夢野久作の素の文章が見たい方➡創作人物の名前について/書けない探偵小説/江戸川乱歩氏に対する私の感想(これは江戸川乱歩ガチ勢の夢野が頑張って書いた江戸川乱歩に対する批評文) など

これらは普段の夢野久作とうってかわってめちゃめちゃ人間らしい文章推しの江戸川乱歩に作品を批評しないといけないってなったから「私が乱歩さんを評価するなんて..ｱｾｱｾ」ってずっと言ってる
創作人物の....は要は「物語書くときに登場人物の名前考えるのめっちゃ悩むで～～～‼‼単純な名前でも複雑でも駄目なんや～～😢😢」って言ってる文章
これはなんとなく創作をしたりオリキャラ作ったりする人は分かる感覚なのではと思う共感できる人は多いのでは..
なんならこの文章から読んでも良いと思う‼‼‼

とにかく、夢野作品は8割くらいの確率で人殺しが起きます。だいたい主人公が犯人なことが多いです。
いかにも夢野久作‼️という作品はやはり人殺しをした主人公が自分の罪に絶望するか、自分のした事が夢か現実かわからずじまいっていうものですね、ドグラ・マグラや一足お先になんかはそうなんですけどそういうのはだいたい表現で気が狂いそうになるので初めて読む方はマイルドなもので文体に慣れるだけでもヨシかも。
ドグラ・マグラ長すぎるし何言ってるかわからね~~けど世界観どんなのか知りたい‼️って人は一足お先にが近いのではと思う

そういえば夢野、新聞記者だったり軍人だったり農家だったりとかなり経験が豊富で、その経験から得られたであろう業界のリアルな暗さとか表現もあるあと家柄か反共主義だったり政治的なテーマも多いかな
息子さんもいらっしゃるんですけどドグラ・マグラのイカレゾーンについては本人、息子さん共に「長すぎる」って言ってるらしい

このへんかな‼‼
他にもまだまだ読んでない話もいっぱいあるのでどんどん読んでいこうと思います
みんなもぜひ読んでみてね～～～～～～～🥺🥺🥺🥺🥺🥺🥺🥺
おしまい

村崎

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FF外から失礼します。日本三大奇書を一度読んでみたい、と思っていた者ですが、村崎さんのこちらの投稿を拝見して、夢野久作さんの作品にとても興味を持ちました。かなり面白そうです。
いつか一気見してみたいので、ブックマーク失礼しますね。

ハノウ
2023/10/18 23:22:52 違反報告リンク

夢野久作私も読んでみようか迷ってたからこの機会に読んでみる！！
短編に長けているのは凄い🥺✨

アリてる.冷花
2023/10/19 0:35:44 違反報告リンク

ハノウさん
コメントありがとうございます‼️🙇‍♀️読んでくださって嬉しいです..
黒死館...もレビューによれば奇書らしい奇書のようですが、虚無への供物は文体が比較的易しいので取っ付きやすいと思います!!内容は時系列などそこそこ複雑ですが詩的な表現に富んでいるので文章を楽しむのもアリだと思います。
夢野久作、ドグラ・マグラの印象から手に取るのを躊躇してしまいがちですが1度ハマればとことんなので好きな人はかなりハマると思います‼️
まだまだ数冊読んだ程度の知識ですが有名どころばかりなので楽しめると思います🙆‍♀️🙆‍♀️ぜひ見返して貰えたらと!!

冷花ちゃん
ぜひぜひ~~‼️夢野久作の魅力を知ってくれる人が少しでも増えたら嬉しいよ💕💕
長編も文章が緻密で好きだけど短編でパッと読めてあっと驚くラストが素敵なんだよね~~‼️

村崎
2023/10/19 3:18:52 違反報告リンク

ドグラ・マグラ読んだことあるけど。。
やっぱ途中であれは辛くなって中断しますよね。
あれは辛いっす。
瓶詰め地獄は結構好きでした。
でも、文豪の中だとやはり、太宰様ですね。
人間失格、今は僕の愛読本です✨

月＠くられん
2023/10/31 19:11:57 違反報告リンク

あれはとりあえず夢野久作に慣れていないと読めない...読破した人は本当にいるのかと思っちゃいますね😂
瓶詰地獄は読み終わった後の虚無感がすごい...
太宰治、実はまともに読んだことがないんですよね...斜陽の序盤だけ読みましたが..
人間失格、新潮文庫のプレミアムカバーにもなっているので買ってみたい❗

村崎
2023/10/31 21:30:50 違反報告リンク