自意識過剰で何が悪い【HQ!!/矢巾】

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最高ランク : 6 , 更新： 2015/05/13 15:00:27

「矢巾のばか、あほ、まぬけ、女誑し、チャラ男」

月曜日の昼休み。いきなり飛んでくる暴言の数々。まあでもこんなものは日常茶飯事だ。
彼女が怒っている理由は俺がデザートのプリンを盗み食いしたから。

「なんか奢って」

きっと睨まれ、はいはいスミマセンデシタなんてすぐに折れて彼女と二人で購買へと足を運ぶ。
なんてったってこんな時の彼女は普段の何十倍もめんどくさい。奢れだの一緒に帰れだの勿論これだけじゃないけど色々な注文を俺に突き付けてくる。断るともっとめんどくさい罵詈雑言やとても女子とは思えない回し蹴りが飛んでくるから余計に面倒だ。

「で、何が食いたいの」

道中彼女に問うてみる。

「ハーゲンダッツ」

「ざけんな。つーかねえよ」

彼女は即答だった。高額の注文をされることは分かっていたが、お前は一体プリンの何倍の値段を俺に払わせるつもりだったんだ。ここがコンビニじゃなくて良かった。

"矢巾、"

彼女が思い出したように足を止めた。
天井を眺めている綺麗な横顔が目にはいる。認めたくないけど、こいつは誰がどう見ても美人でしかない。

「今度は何だよ」

及川さんも言ってたんだ。
"矢巾の隣にいつもいる女の子可愛いよね～、なんて名前なの？"
どんなに尊敬する先輩だろうと恋愛事と部活は完全に別だ。こればっかりは譲れない。勝手に自分で当たって砕け散って下さい。
俺が彼氏、そう胸を張って言える日はいつか来るのだろうか。今の俺は彼女の気の知れた友達でしかなくて、ああ、どうやったら彼女を手に入れられるんだろうなんて考えは止まらない。

「奢ってくれなくていいからさ、放課後どっか連れていってよ」

俺のことを一切見ずにそう告げた彼女の頬は紅く染まっていた。俺もそこまで鈍感じゃない。
ただの勘だけど、彼女の頬が紅く染まったのは、暑さでも寒さでもない。
自意識過剰だなんて言われるだろうけど、俺の存在が彼女にそうさせている。

そんな気がしたんだ。