逃走劇
小説最高ランク : 24 , 更新:
✎ܚ
「俺な、この世界が酷く息苦しく感じてしまうねん。」
唐突な告白であった。
“この世界が息苦しい”それは僕も同じだ。
でも
「だから?」
「じゃあどうするんだよ」
なんて、冷たい言葉ばかり出てきそうで、彼を傷つけてしまいそうだったから、口を紡いだ儘、彼の話を聞く。
「まあ、世界というよりかは学校とか、親だとか謂わば世間が息苦しく感じるだけなんやろうな」
彼は苦笑いを一つして僕に“そう思わへん?”なんて問いかけてきた。
全くもって、その通りだ。
この国“二ホン”は僕たち“性的少数者”にはあまりにも冷たすぎる。
「ね、なんで急にこんな話なんてするの?」
口を開けて、言の葉を発した。
そうすると、彼は“待ってました!”なんて言わんばかりに笑い出す。
急に笑い出され、僕の中に謎が走った。
しばらくの間困惑していると、彼が口を開けた。
「俺な、ジブンとならどこへでも行ける気がするねん」
「一緒に逃げ出してしまおうや」
この言葉が、僕には何よりもうれしかった。
彼と二人だけで、逃げて、生きて、死んでいく。
あっという間に想像がついた。
返答はもちろん
「いいよ」
「面白い考えじゃん、最初で最期の反抗ってことでしょ?」
彼は笑って頷いた。
「ーー逃げ出すのは明日でええか?急やから無理だったら日にちずらすわ」
確かに、急だ。
だけど、こんな世界から逃げ出せるのならば急だって構わない。
しかも、僕にとっては“好きな人”と二人で逃げ出すチャンス。
「早いなぁ、でも構わねえよ」
なんて、笑って答える。
2022年、9月24日。
僕たちの逃避行が決まった日。
「ほな、今日はもう遅いし持ち物はメールで送るわ!!ほなな~!」
満面の笑みで僕にそう告げた彼、そんな彼に僕も笑顔で応える。
「うん、また明日。」
これは
強い絆や信頼関係を持つ人にのみ恋愛感情を抱く“デミロマンティック”の僕
と
心の性と体の性が一致していない“トランスジェンダー”の彼
との
逃避行の物語である。
※ この作品は実際の人物 、 出来事とは関係のないフィクションです ※
※ また 、 性的少数者に対する差別的な意図はございません 。 ※
文才が欲しい今日この頃 。
好評だったら第二話書く 。 第二話ほしいひといいね ☞
びやつこ
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