*唱えたとしても

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※注意!
・思い付きで書いたPART5
・駄文すぎて途中から何言ってるか…
・矛盾点疑問点ありすぎてもうワカンナイ
・英語さんの一人称は“私”だけど男だし敬語だし紳士(鋼の意思)
・大英帝国は17~19世紀までだっつってんだろ(口調)
・前回から続いてる部分がありまする(初手から)
・前回の話は今回の20年ほど前って設定。
・国名や史実名がそのまま出てきます。
↪以上OK!って方のみ読めよ~





『…アメリカンは』


大きくなったら、何になりたいか夢はありますか?


小さい頃、一度そう聞かれたことがある。

『夢?何でも良いの?』
『はい。夢は、叶う叶わないに関係せず、好きに思うことが出来るんですよ』

好きに。つまり、自由。
出身地が出身地で自由を愛する地だからか、
その言葉にオレは目を輝かせて。

『好きに?自由!やった!えーっとね、えーっとえーっと、ボクの夢は…』



「………」

そこでふ、と意識が覚醒する。
そばにあるカーテンから漏れる光をしばらくボーッと見つめていれば、
木製のドアからコンコンと良い音が響いた。

「リック~そろそろ起きるじか……あれ、起きてる」
「アン…オレだってもう大きくなったんだよ、一人で起きれる」

と言いつつも、あくびを一つして背伸びをする。
正直、今すぐ二度寝してしまいたい。

「今日は大事なお話があるって、お偉いさん達が言ってたでしょ~」
「あー…、うん。えーっと……誰?」
「ジョージだよ」
「そうだっけ……」
「寝惚けすぎだよ、一回顔洗ったら?」

着替えおいとくからねという言葉を残し、
自身の妹であるカナダ英語は私室を出て行く。
眠気のせいでそれに大した反応は出来なかったけれど、
それでも静かにもそもそと着替え始めた。

「(懐かしい夢、見たなぁ)」

ボーッと着替えつつも、今日見た夢を思い出し、
思わず小さく笑い声がこぼれた。
今日もきっとDaddyに会うだろうし、
何をして遊ぼうか。
「もう大きくなった」とは言ったけど、
まだまだ遊びたい盛りなのだ。
まぁいつも何も言わず勝手に遊びに行ってるけど。
親子だし良いよねって思うのはしょうがない。

「…あ」

顔、洗う前に着替えちゃった。
服濡れるのアンに怒られるから嫌なんだよなぁ……。





「Good morning,アメリカ英語の出席だよ~……うぅ」
「Good morn…顔洗ってこなかったの?」
「だって服濡れるとアン怒るもん…」
「もんじゃないよ」

結局顔を洗うのはやめにして、
そのままお偉いさんと妹がいる会議室まで向かう。

「Good morning,アメリカ英語様。相変わらずですね」
「その一言は余計だね……」

クスクスと笑うのは例のお偉いさんの一人。
さっきアンがジョージって呼んでた人だ。
確か苗字はワシントンだったかなんだったか…。

「ほら、シャキッとしてください。今日はとても大切な話があるのです。」
「OK…」

まだ眠い目をこすりながらも背筋を伸ばし、
彼を見据える。
大事な話とは一体なんだろうか。
周りのお偉いさんもなんか緊張してるような…?
そう思っていると、そのジョージが口を開いた。

「アメリカ英語様もカナダ英語様も、先の事件についてはご存じですね?」
「…あ、あれ」

その言葉に、思わずアンが反応する。


先の事件。


それは、ボストンで起こった事件。
突如人々の一部が貿易船を襲い、紅茶を海に落とした事件だ。
紅茶に罪はない、なんてことするんだい…。

「あの事件の根本的な問題は、そもそも課税の強化にあります。」

課税の強化。それはフレンチ・インディアンという戦いによる
財政危機の解消を目的としたもの。
Daddyの出身地のお偉いさんはそれで砂糖法、印紙法を成立させて
オレの出身地から税収増を図った…んだけど、
確か印紙法は広範な反対運動を呼び起こしたから撤廃されたんだっけ。

そんな中今度は法を制定して新たに税を課そうと試みるものだから
またも反対運動。法を撤廃することになって慌てるお偉いさんを
見ながらDaddyが何とも言えない表情をしてたのは、
はっきり覚えている。

「今まで度重なる増税を課されてきたこの地ですが、本国のイギリスでは茶に対する課税は廃止されず、本国の茶は我々の不満の象徴となりました。」
「確か、茶法によってイギリス東インド会社の茶が安くこちらに流入することになったから、船に暴徒が乱入して積載されていた茶を海に投棄したのが、この事件ですよね?」

ジョージの言葉に、アンが言葉を続ける。
それにジョージは頷いた。

「先の事件が終わった今も、人々の怒りは増すばかりです。そこで私達は、一つの行動を起こすことにしました。」
「行動?」
「―――"独立戦争"です」

その言葉に、自分とアンの喉からヒュッと空気の鳴る音がした。

「何故です?何故いきなりそんな…」
「そ、そうだよ、戦争なんてよくないぞ、話せば…」

そう言うオレとアンの言葉に、
ジョージは悲しくも首を横に振った。

「話し合いによる解決は幾度も試みました。ですが…本国はこの地に対して次々と懲罰的な立法措置を実行するばかり。こうした危機にピットとフランクリンが協力して議会に我々と和解するよう働きかけてくれたのですが、首相ノースは国王の強い意志を背景に、我々へ強硬な態度で臨む決意。もはや民の怒りを打ち消すことが出来るのはこの手しかないのです」
「そんな……」

アンが口を両手で覆い、驚愕の表情をする。
自分も目を見開き何か言おうとするものの、
口からは言葉が一切出なかった。



そしてそのまま始まった独立戦争。
初めはDaddyの国が優勢だったけど、
途中から別の国が味方にまわったのと
大西洋の横断が大変だということで、
徐々にこちら側が優勢になっていった。

これはあくまでもオレの出身地の人達と、
Daddyの出身地の人達の戦い。
アンの出身地の人達は中立にまわったけど、
そこにも戦火が飛びつつある。

オレはというと、もうしばらくDaddyに会えていない。
そりゃそうだ。だって戦争の途中なのだから。
Daddyもオレも、海を渡って会いに行けない。


そんな中のこと。

戦争がオレの出身地優勢のまま終わりを迎えそうに
なっていた頃。
ふいにオレはジョージに戦場へ連れていかれた。

何故連れていくのかと聞けば、
「一度でも、戦争を見て欲しかったのです」と。

今思えば、戦争を経験したとはいえ人間はいつか死んでしまう。
素体である言語が消えない限り永遠を生きるオレは
ずっと覚えているから、戦争のひどさを忘れないよう
見て欲しかったのだと思う。


初めて見る戦地は、とても酷かった。


いつまで経っても鳴りやまない発砲音。
時間が経過するにつれ増える、地面に倒れた人々と赤。
つい先ほど会話を交わした者が冷たくなっていた時、
とうとう自分は逃げ出してしまった。
逃げ出したって、帰り道もわからないのに。

今もきっと皆頑張っているのに。
オレ一人だけが、逃げてしまった。
戦火が過ぎ去り死体だけが残った荒地。

もう遅い後悔を抱きながら、
無我夢中で走っていたときの
記憶を頼りになんとか元の場所へ戻ろうとする。

ホントはまた見るのが嫌だけど。
こうやってまた後悔するのも嫌だって。

「(ジョージ…心配してるかな)」

服を土だらけにしつつそう思いながら
ガサガサと茂みの中をかきわけて歩けば。

「Daddy?」

見慣れた姿があった。

「……アメリカン?」
「Daddy!!!!!」

一体いつぶりだろう。
もうずっと、ずっと会っていなかった。
喜びに身を任せ、一目散にDaddyの元へ駆け寄る。
しかし途中で、Daddyの服装が違うことに気付いた。


それはまるで、Daddyの出身地の兵士が着ていたような…


「動くな」
「……え?」

チャッと、ふいに何かを向けられた。
そのことに理解が出来ず、ただ"それ"を見つめる。

「それ以上近付けば、撃つ」
「Da...ddy....?」

いつも優しい口調で、優しく接してくれる。
そんなDaddyが、厳しい口調と共に
自分へ向けたのは。

「な、なんで…?」


なんで銃剣(マスケット)を、こっちに向けるの?


「……私と君は今、敵同士だ。会うべきじゃない。」
「そ、れは、関係ないじゃないか!争ってるのは出身地の人達で、オレ達には関係なんか「ある」」

銃剣を向けたまま、Daddyは喋る。

「戦争は、いつだって何が起こるかわからない。戦争の結果によって、国が消えることもある。」

国の消滅。
それは、言語の消滅を意味する。
言語とは、国があるからこそ成り立つもの。
国が消えてしまえばそこに住んでいた人々も
やがて死んでいき、言語が途絶える。
子や誰かに教えることは出来るだろうけど、
消えた国の言葉を、誰が知りたいものだろうか。

「これは、互いの存続をかけた戦争でもあるんだ。うわべは関係なくとも、結果がどうなるかわからない戦争には、私達が明日生きれるかどうかがかかってる。」
「それでも!…何も、銃剣を向けるなんてこと、しなくていいじゃないか!確かに存続は関係あるかもしれないけど、だからって、向けるまででなんか…」

そうやって無意識に足を一歩踏み出したとき。
パァンと、一発の銃声が聞こえた。
それと同時に、自身の左頬を何かがかすめる。

「動くな、近付くなと言ったはずだろう。」

優しいまなざし、優しい言葉、優しい笑顔。
それらすべてがなくなり、
厳しい言葉と共にキッと見つめられた時。
気付けば自分は、涙を流していた。

「ど、どうして…向けること、ないじゃないか…!オレ達まで、戦う理由なんて、なんで、どうして……!」

Daddyが自分に発砲したことを、信じられなかった。
その睨みつける眼差しを、見たくなかった。

「オレ達が望んだわけでもないのに、戦争して、それで、向けないといけないのかい?オレ達まで、敵同士でいることなんて…」

今すぐ傍に行きたいのに。
戦争が怖かったって泣きつきたい。
抱擁してもらえば、きっと、安心するだろうから。
なのに一つの銃剣が、それを許さない。

「ねぇ、Daddyはオレを守ってくれるんでしょ?昔、言ってくれたじゃないか。なら、今ここで銃剣を向けなくたって、支え合えば存続だって、絶対……」

オレの夢は、ずっとDaddyと居ること。
なにも居るだけじゃない。
本を読んだり、手を繋いだり、ただただご飯を食べる。
そんな日常の平和を、一緒に味わう事。
オレと、Daddyと…アンと。

「だから、だから……一緒に居ようって、ずっと…!」
「アメリカン」

大好きなDaddy。
その彼が、一つの事実を告げた。


「夢は、唱えたとしても叶うとは限らない」


そう言って、Daddyは近付いて来る。
銃剣を、向けたまま。

「…今ここで、君の頭を撃てば。君の出身地の人達はバベルの塔のように言葉が通じなくなって、負けると思うか?」

半分笑うように告げるDaddyに、
とうとう自分は泣き崩れた。



雛はいつか、親鳥から離れて空を飛ぶ、
いつかは、親離れをして、飛び立たないといけない。

――でも。

この別れはあまりにも、悲しくないかい?


神様、ユーは残酷だよ。


あの後。
泣き崩れるオレを一人残し、Daddyはどこぞへと消えて行った。
多分、出身地の人達の陣営へ戻ったんだろう。

戦争は、オレの出身地の人達の勝ちだった。
Daddyの出身地の人達は独立を認め、一つの国になる。

何故Daddyが戦場に居たかはわからない。
でもDaddyは、ずっと戦場に居たんだろう。
国と、言語と、人々は一心同体。
どれかが消えれば散りぢりになり、やがて互いに消える。

オレよりずっと長く生きてるから、Daddyは
戦争の重さを知っていた。
だからオレみたいに「関係ない」なんて言わないで、
安全な場所で指揮を取ることもせず、
ただ死に逝く人達のために戦場で銃剣を手にとった。


あれからオレはというと、しばらく荒れた。
あの一件があったってこともあるし、
独立によりDaddyの出身地の人達とジョージ達の関係は冷えて、
会いに行くことが完全に出来なくなってしまったのだ。

ジョージ達みたいに何か信念を持ってでの戦いじゃなく
荒れた理由はオレ一人の身勝手な理由だけど。

一時期戦火がとびかけたアンの出身地の人達はというと、
関係が冷えきってる間に徐々に独立していった。

ジョージ達みたいな争いを起こすことはせず、
話し合いによる解決を見せていった。


きっとこの争いがDaddyの出身地の人達に
痛手を負わせたから話しあいにも応じるようになったんだろうけど、

それでも、

なんの気まずさも残さず平和的に解決した
アンが羨ましかった。


また家族一緒にいたい。
そう思うのは、いけないことなのだろうか。

「夢は唱えたとしても叶うとは限らない」ってDaddyは言ったけど。
「言い続ければ真実になる」とも言うから。


また平和になって、ほとぼりが冷めて、
会いに行けるようになって。

その時には、手を広げて欲しい。
何も持たず、ただ手を広げて。





「おかえり」と、声をかけて。

しょぅゆ。


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今は平和なんで大丈夫だよ多分( ˘ω˘ )

しょぅゆ。
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